■ 僕にとってギフトはものづくりの原点かもしれない。


ー個人的なギフト体験から聞かせてください。


俵藤ひでと(以下、俵藤) 子どもの頃って、自分のほしかったものが手に入ることが一番嬉しかった気がするけど、大人になってくるに従って、相手がどんな思いで贈ってくれたとか、そういう部分のほうが嬉しくなってくる。僕はわりと自分で作って贈ることが多いんですけど、元々は職人だったから、「自分でデザインしたものを作る」ということを考えると、僕にとってギフトはものづくりの原点かもしれない。


 


ー「THE GIFTER」というプロジェクトの話を聞いたときの
最初の印象はどうでした?


俵藤 いや、きたなと。大量生産されたものを流通させるという方法じゃなく、オーダーメイドできるギフト、というのは魅力的だった。


小松隆宏/THE GIFTER代表(以下、小松) THE GIFTERにどういう人を選ぼうかなと思ったときに、単純に「この人と作ったらテンション上がるだろうな」とか「いいものを作る」とかはもちろんで、そこにメッセージが乗っかってる人というか。何かしら提案している人たちを選んでいる。


ー「バーコードフォント」というアイデアはどこから生まれたんですか?


俵藤 小松くんとディスカッションしながら、ですね。以前から「究極に個人的なストライプを作りたい」とは思っていたんです。究極的に個人をストライプ化するとバーコードに辿り着く。「寄せアクリル」でバーコードを作れば、その人のためだけの柄になるんです。例えばチェック柄にしても、そもそもイギリスでは貴族によって柄がわかれていて、その柄によって家を特定できたりもした。そういった個々にとって特別なストライプ柄を作りたかったんですよね。

 

■ 工芸品の領域を少し超えた感じもおもしろい。

ーこの「寄せアクリル」について教えてください。

俵藤 「寄せアクリル」は、アクリルのパーツをひとつひとつ組み合わせ、張り合わせて板を作る工程を表す言葉で、僕が作った造語です。箱根や小田原の寄せ木細工を特別意識したわけじゃないんですが、「寄せ」という言葉の響きと意味は非常に日本的で好きだった。この「寄せアクリル」自体はすごく手間がかかる手法で、量産できないことはわかっていたから、これまで積極的には作ってこなかった。でもTHE GIFTERに背中を押されたというか。



ーストライプという柄に込めた思いはありますか?

俵藤 ストライプって整理されたもので。一方、寄せアクリルの特性として、その整頓されたものがちょっとズレてたり、ランダムになるんです。だから整理されたものとランダムなものが混在している。人の世の中もそうじゃないですか。調和と不調和だったり。豊かなものってそういうものなのかなって。バーコードも一見ランダムで、もらった人にとっては、なんでこの柄になってるのか予想もつかないんだけど、そこに意味がある。最初、試作品を作ったとき、出来上がったものにバーコードリーダーをかざしたときは感動しましたね。工芸の手法で作ったものが、バーコードリーダーというテクノロジーが読み取る。工芸品の領域を少し超えた感じもおもしろいなって。

ー意識としては「工芸品」なんですね。

俵藤 そうですね。手仕事、工芸品。そこはこだわりです。アクリルって、例えば5mmの厚みのものだとしても、一枚のなかで誤差があるんですよ。上は4.8mmで下は5.3mmとか一定じゃないから、それも考えながら作っていかないと平行が出ないし、バーコードリーダーが読み取らない可能性もある。大量生産では決して作れないものですね。

ーかなり緻密な作業になってきますね。

俵藤 寄せアクリルって、ものすごくロジカルに完璧に近いものを求めて寸法を出していくけど、作るときは感覚的でもあって。完璧なものと無作為なものが混在しているんです。

■ 断面にこそものの本質があって、無意識のうちに人は惹かれる。



ー「アート」と「ギフト」の関係性って、どう捉えていますか?


俵藤 あまり変わらないかもしれない。あえて違う部分を考えるなら、能動的に作るかどうかくらい。僕自身の作風が、自分の内側から出たものを形にして伝えるんじゃなくて、関係性を単純化して見せたい、というものだからかもしれないけれど。 

ーなるほど。


俵藤 寄せ木細工や金太郎アメも同じなんですけど、断面が表に反映されるというか。昔からそういうものに惹かれるんですが、それはきっと断面を見れば、事の成り立ちが一目瞭然だからかなって。断面にこそものの本質があって、だからこそ無意識のうちに人は惹かれるんじゃないかと思っています。断面から、作られる工程や作り手の手間や息づかいまでもが伝わる気がしています。


ー次にトライしてみたいギフトの形はありますか?


俵藤 もっと大きなものを作ってみたいですね。壁一面のバーコードだとか。寄せアクリルを集合させて、モナリザとかの名画を作ってみるだとか。似顔絵をビット化して作っていくのも可能性としてはあるかな。

小松 バーコードが、平面だけじゃなくて立体になったらおもろいかも。斜めからだと(バーコードリーダーで)読み取れないけど、正面からならいける、とか。あと、シルエットがモナリザで、そこにバーコードがあるものだとか。バーコードとしても読み取れるし、単純にマークとしてもかっこいい、というもの。

俵藤 それもいいね。そうやってもっとバーコードで遊んでみたい、というのはありますね。

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